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シニアテニス両手打ちでの挑戦記 60歳代半ばにしてエルボーをこじらせ片手では打てなくなりバック、フォアーとも両手打ちに替えての試行錯誤、全日本ベテランテニス選手権出場目指してのつれづれ。

ていちゃん
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    じいちゃん頑張ったよ、きりんちゃん

    気温35度、真夏日に戻っていた。3番コートの2番目、60歳代の決勝戦の後に70歳代の決勝戦が組み込まれていた。
    決勝戦の対戦相手H氏はここ一二年の対戦はないが過去、長崎雲仙の国際テニストーナメント、宮崎の熊谷杯など8ゲームの大会で3回ほど惜敗している相性のよくない選手だ。この一二年でぼくのテニスは上達しているはずだとの自負はあるが、H氏も四月の九州毎日で準優勝したりして、70歳になったばかりの活躍は著しい。いまのぼくには重荷に思えたが恩返しをしたいという気持ちはふつふつとあった。
    過去の対戦で相手のテニスは大体つかめている。いつもリードして追いつかれて突き放されたという苦い記憶。

    3番コートのベンチ際には数メートルのブロック塀が立ちはだかって、風をさえぎりベンチに戻るのが億劫にになるほど灼熱の空気がそこには渦巻いており、最悪の環境で試合が始まった。時折コート上に舞い降りる冷たい風が一服の清涼剤に思えたが、それはほんの一瞬だけ、めまいのしそうな炎天下でのコートで試合は進んで行った。

    出だしは互いにサービスキープのジャブではじまった。ぼくの足はまだ動いていたのでネットにでたりして積極的な攻
    めが成功して思わぬファーストを63で取ってしまった。
    23回戦を思えば出来すぎ、ぼくはセカンドもこの調子で行けば、行くのではと期待の気持ちがふくらんでいた。試合中のこんな甘い思いがぼくを窮地に追い込んでいったのだ。もっと心を引き締めるべきだった。

    セカンドは33まで行ったが、体力の消耗が激しく早くゲームを取って終わらせたいとの気持ちが強くなっていた。疲労のせいかチャンスと思えた攻撃にボンミスが目立ち始め、それを見透かしたかのように相手は冷静にボールを処理しだし、思いのままに振り回されはじめた。もうどうしょうもなく36でセカンドを落としてしまった。

    三度目のファイナル突入となってしまって、逆の立場を経験する羽目となった。

    二人ともトイレ休憩を取って一息いれた。途中木陰から吹き抜ける風の心地よいこと、だが灼熱のコートが呼んでいた。

    H氏が有利に思えた。ぼくはそれを二回経験している。
    いよいよ10ポイント先取のスーパタイブレークが始まった。02と先行され相手の気迫が伝わってきた。ちょっと落胆したが12 22と戻して、やる気が湧いてきた。
    流れが変わったのか次々とポイントが取れはじめ気がつくと94と5マッチポイント、勝ったと思った。丁寧につないでいけば、ここと言うときは冒険をおかせば1ポイントは取れると考え、慎重にゲームを進めたつもりだった。
    しかし相手は5ポイント、ぼくの策略を含めたボールを神がかりてきにミス一つなくやり通してポイント積み上げ、気がつくとまさかの99になって、ぼくは舌をまいていた。
    ぼくは精いっぱいやったし、彼はそれ以上のことをやったのだから。
    頭の中は真っ白、それから1010 1011とぼくは相手にマッチポイントを許してしまった。万事休すの思いが頭をよぎる。昨日対戦したF氏がH氏の応援に来ている。ここで負けたら、語り草となるのだ。マッチポイントを強気でストレートで決めようとしたH氏のボールはきわどくサイドアウト。1111。まだ首はつながっていた。次のポイントは相手のバックサイド深くスライスを打つと、バウンドが変化したのかミスってくれ、再びぼくのマッチポイント、自信のない両手打ちバックハンドを思い切り振り上げると高く舞い上がって相手のフォアーサイドコーナぎりぎりに落ちた。アーっという表情で相手はラケットを振ったが舞い上がったボールはベースラインを大きく割っていた。きわどいボールにアウトと言う声がでなかったという表情の苦笑いを浮かべ、ネットの近づいてきた。ぼくたちは握手を交わした。勝利はどちらに転んでもおかしくなかった。


    1311と今日もまた薄氷を踏む勝利をしてしまった。全試合を振り返れば、23試合と苦戦の連続、無欲の参戦がまさかの奇跡と思える優勝を成し遂げていた。ぼくのテニススタイルからこんなことは起こりえないできごと。きっと何かがあったんだろう。

    3番コート
    JOP大会 | 投稿者 ていちゃん 22:55 | コメント(2) | トラックバック(0)